📌 この記事でわかること
- ASDの次男の幼児期、脱走・迷子・外出パニックがどれくらい大変だったか(実録)
- わが家が試した対策と、破られた対策(鍵・手つなぎ・先回り申告)
- 「終わりが来た」話——脱走の日々がいつ、どう落ち着いたか
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「気づいたら、いない」
この恐怖を、何度味わったかわかりません。
ASD(自閉スペクトラム症)の次男の幼児期は、脱走と迷子の日々でした。
スーパーで消える。家から消える。病院の待合室から消える。
手をつなげば振り切られ、鍵をかければ破られる。
いま同じ日々の中にいるお母さん、お父さんに向けて、わが家の実録を書きました。
対策の話もしますが、先にお伝えしたいのは——この日々には、終わりが来たということです。
手をつなげない・目を離せない——幼児期の実録
次男は、手をつなぐのを嫌がる子でした。
握っても、振り切って走り出す。呼んでも、止まらない。
「危ないから手をつなごうね」——理屈での説明は、まったく効きませんでした。
当時の次男は、火がついたように泣きじゃくると、言葉が入らなくなる子。上の長男(ADHD・多動なし)はぼーっと遅れていくタイプだったので、「同じ発達障害でも、こんなに違うのか」と衝撃を受けたのを覚えています。
スーパーでは、すぐ行方不明になりました。
店内放送のお世話になる前に、こちらが先に走り回って探す。カゴを置いて、名前を呼びながら。
結局、「次男を連れていては買い物ができない」が、わが家の結論でした。
病院も大変でした。待合室をうろうろ、走り出す。
会計のあいだ、名前を呼ばれた一瞬のすき——そこで消えます。だから私は、受付で毎回、先にこう言うようにしていました。
「自閉症なんです。目を離すと出ていってしまうので」
恥ずかしさより、安全。先回りして伝えておくと、スタッフの方が一緒に気にかけてくれる。これは、いま振り返っても「やってよかった」ことのひとつです。
⭐ ここが大事!
病院・施設では「先回り申告」が効きました。「特性があって、目を離すと出ていきます」と受付でひとこと。周りが「見守りの目」に変わってくれます。恥ずかしさは、安全と引き換えにできます。

家からの脱走——鍵と椅子のいたちごっこ
いちばん怖かったのは、家からの脱走です。
玄関の鍵を、手が届かない高い位置に付けました。
——次男は、椅子を運んできて開けました。
気づくと、いない。
家の中を探して、いない。外に出て、名前を呼びながら近所を走る。あの心臓が縮む感じは、経験した人にしかわからないと思います。
何度も行方不明になりました。近所の友達のお母さんを巻き込んで、一緒に探してもらったことも、一度や二度ではありません。
このとき学んだのは、完璧な対策はないということ。そして、近所に事情を話しておくことが、いちばんの安全網になるということでした。
「うちの子、出ていってしまうことがあって」と伝えてあった家が多いほど、見つかるのが早かったんです。
⭐ ここが大事!
鍵の工夫は破られることがあります(うちは椅子で破られました)。物理的な対策と同じくらい、「近所への事前共有」を。探す目が増えることが、最強の安全対策でした。
外出先のパニック——電車で1時間、「無」になった日
外出先でパニックが起きると、帰るに帰れません。
忘れられないのは、電車での1時間です。
次男のパニックが始まって、泣き叫んで、でも降りても帰れない。私は次男を抱きしめて、ただ耐えました。
周囲の視線が、突き刺さります。
「虐待だと思われているんじゃないか」——その恐怖と戦いながら、心を「無」にして、家までの時間をやり過ごしました。
あのとき私にできたのは、対策と呼べるようなものではありません。
ただ、いま同じ経験をしている方に伝えたいのは——あなたの育て方のせいで、パニックが起きているわけではないということです。
ちなみにこの時期の次男は、保育園では明るい人気者でした。
外で「いい子」の顔をして、私との外出で限界が出る。——それだけ、私に気を許していたのかもしれません。そう思えるようになったのは、ずっとあとのことですが。
特性のある子の外出は、定型発達の子の外出とは、難易度がまるで違います。
「今日はスーパー1軒で帰る」でいい。周りの目より、あなたと子どもの安全と体力を優先していいんです。
⭐ ここが大事!
外出先のパニックは、親の育て方のせいではありません。予定を減らす・逃げ道(すぐ帰れるルート)を確保する・無理な外出はしない。「ちゃんとした外出」より「無事に帰る」が正解です。
終わりは、来た——小学校低学年で変わった
ここまで読んで、しんどくなった方もいるかもしれません。
だから、いちばん伝えたいことを書きます。
次男の脱走と癇癪の日々は、小学校低学年で、一気に落ち着きました。
自分の気持ちを言葉にできるようになってきたこと。感情を処理する力が育ってきたこと。
あとから思えば、あの脱走の日々は「伝えられない・処理できない」が行動に出ていた時期だったんだと思います。
その次男は、いま中学2年生。
バスケ部で汗を流して、一緒にスーパーにも行けます。というより、荷物を持ってくれます。
あの頃の私に教えてあげたい。
「この日々は、ずっとは続かない」と。
お子さんの脱走に消耗しきっているお母さん、お父さん。
対策は破られるし、周りの目は痛いし、体力は限界だと思います。でも、あなたが今日も探しに走ったこと、それ自体が、ちゃんと子どもを守っています。
📚 自閉症スペクトラムがよくわかる本(本田秀夫)
脱走や癇癪の「なぜ?」を、特性の面から整理できる定番書です。行動の理由がわかると、対策の立て方も、親の心の持ちようも変わります。
⭐ ここが大事!
脱走・迷子の日々は、成長とともに終わりが来ることがあります(うちは小学校低学年でした)。いま渦中にいる方は「対策」と同じくらい「自分の消耗を減らすこと」を大事にしてください。
まとめ——完璧な対策より、倒れない親
わが家の脱走対策を、まとめます。
- 先回り申告:病院・施設では受付で特性を先に伝える(見守りの目が増える)
- 近所への共有:「出ていってしまう子」と伝えておく(探す目が増える)
- 無理な外出をしない:買い物に連れて行かない選択も、立派な対策
- 鍵の工夫はいたちごっこ前提:破られたら次の手。完璧を目指さない
そして、どの対策よりも大事なのは、親が倒れないことでした。
探して、謝って、抱きかかえて帰る日々は、本当に消耗します。頼れる人と場所には、遠慮なく頼ってください。
この日々の先に、「荷物を持ってくれる中学生」がいるかもしれません。
うちには、いました。
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