📌 この記事でわかること
- 何をやっても続かなかったADHD長男の、小さいころからの記録
- 「努力できない」の裏にあった、ワーキングメモリーと実行機能の話
- WISCの結果と本人の言葉で、親の見方がどう変わったか
※本記事にはPRが含まれます
「なんで続かないの」
その言葉を、何回言ったかわかりません。
習いごとも、ドリルも、通信教育も。始めるときはあんなにやる気があったのに、三日目には机に向かわなくなる。
好きで始めたはずのことまで、気づけば触らなくなっている。
ADHD(不注意優勢型)の長男が診断を受けたのは、小学3年生のとき。いまは高専の2年生で、寮に入っています。
長いあいだ私は、この子を「努力ができない子」だと思っていました。
——その見方が根っこからひっくり返ったのは、ずいぶん後になってからです。
😔 何をやっても三日坊主だった
振り返ると、長男は本当に「続かない子」でした。
- 通信教育は、はじめの数日だけ進んで止まる
- 提出物は、やったのに出てこない
- 部活には入らず、ずっと帰宅部
- 英検は5級・4級に受かったあと、3級のテキストを買いそろえたところで止まった
中学のころは、塾にも「行くだけ」でした。席には座っている。でも家では、一度もテキストを開かない。
中3の1学期の中間テストで、突然やる気を出したことがあります。5教科の合計が、いつもより100点近く高かった。私はびっくりして、これがこの子の本気かと思いました。
……期末には、きれいに元通りでした。
夏休みもダラダラ過ごすのを見て、私は「もう言っても無駄だ」と口を閉じました。あのころの私は、この子には粘る力がないのだと、半分あきらめていたと思います。
⭐️ここが大事!
「続かない」は、性格や意志の弱さのように見えます。でもわが家の場合、続かなさの理由は気持ちの外側にありました。
🤔 「好きなこと」でさえ、続かなかった
不思議だったのは、好きなことまで続かないことでした。
嫌いな勉強が続かないのは、まだわかります。でも自分から「やりたい」と言い出したものまで、途中で止まる。将棋や楽器、習いましたがすぐに挫折。しかし今でも好きでいる様です。
いっぽうで、ゲームや動画は何時間でも続きます。
当時の私はそれを見て、「結局、楽なことしかやらないんやな」と思っていました。
ここが大きな誤解だったと気づくのは、ずっとあとになってからです。
🏫 それでも、高専2年の今も毎日学校へ行っている
その長男が、中2の3月に突然「高専に行く」と言い出しました。1つ上の友達に、寮の写真と食堂のメニューを見せてもらったのがきっかけです。
推薦入試は落ちました。そのあとの一般入試で、偏差値50以下から偏差値61の高専に合格しています。
入寮してからは、私の予想を外し続けています。
自分で起きる。自分で朝ごはんを食べる。遅刻をしない。
——あの、朝いつまでも布団から出てこなかった子がです。
1年の後期には赤点を2つ取って、進級が危ういところまで行きました。それでも進級して、2年になった今も毎日学校へ通っています。
三日坊主だったこの子が、2年以上続けていることがある。
その事実に、私はしばらく気づいていませんでした。
🛋️ 家に帰ると、何もできなくなる
帰省してきた長男を見ていると、その理由が少しわかる気がします。
家にいるとき、この子はとにかく動きません。勉強もしない。趣味らしい趣味もない。ソファでスマホを見て、ぼんやりしている時間がとても長い。
高専1年の春休みに帰ってきたときも、活気がありませんでした。
以前の私なら「せっかくの休みなのに」とイライラしていたと思います。
でも今は、学校で使い切ってきたんやろな、と思うようになりました。
授業を受ける。課題を出す。時間を守る。人と話す。
——ほかの子が当たり前にこなしているこの一式が、この子にとってはたぶん、かなりの力を使う作業です。
家に着くころには、もう残っていない。
⭐️ここが大事!
帰ってきてごろごろしている姿だけを見ると、怠けているように見えます。でも、その前の8時間をどれだけの力で乗り切ってきたかは、家からは見えません。
📊 WISCの結果を見て、私の見方が変わった
長男は中学1年のときに、WISC(知能検査)を受けています。
結果の数字は、低くはありませんでした。とはいえ、中の上くらい。
大事だったのは、凸凹の形のほうでした。
WISCは4つの指標に分かれています。長男の場合、そのうち「ワーキングメモリー」だけが、ほかの3つに比べてはっきり低かった。
ワーキングメモリーは、一言でいうと「聞いたことや今やっていることを、頭の中で一時的に持っておく力」です。ここが弱いと、こんなことが起こります。
- 口で言われた指示を、途中で忘れる
- 段取りを組み立てるのが苦手
- 話しているうちに、何の話だったか分からなくなる
検査の所見にも、「手順が分からない」「今やることが分からず、取り掛かりが遅れる」という主訴の背景にある可能性がある、と書かれていました。
そして、報告書に残っていた長男自身の言葉に、私はいちばんこたえました。
「がんばらなきゃと思っても、気持ちが落ちて向かえない」
「2学期末、努力してテストの点数は上がった。提出物は『がんばらな』と取り掛かろうとしたけど、まとめに何を書いていいか分からなくて出せなかった」
——やる気がなかったんじゃなかった。
やろうとして、入口で止まっていた。
🧠 あとで知った「実行機能」のこと
このあと調べていて出会ったのが、「実行機能」という言葉です。
一言でいうと、「やることを決めて、段取りして、最後までやり切る力」。ADHDの特性のひとつとして、この実行機能が働きにくい場合があると知りました。
医学的なことは医師にしか判断できないので、ここは「わが家の場合、そう考えると納得がいった」という範囲の話です。
それでも、思い当たることが多すぎました。
- 好きなことでも、「次の一手」が組み立てられないところで止まる
- ゲームや動画が続くのは、次にやることを自分で組み立てなくていいから
- 「あとでやる」が、本当にあとで出てこない
楽なことしかやらない子、ではなかった。
段取りの部分に、人よりずっと力を使う子だったんだと思います。
📚 発達障害の人が見ている世界
「なんでこうなるんやろ」が、本人の側から見るとどう見えているのか。精神科医が、日常のあるあるを本人の側から解説してくれる一冊です。わが家では、長男の行動の理由を考えるときのヒントになりました。
🌱 「努力できない」のではなかった
今の私は、こう思っています。
努力ができない子なのではなく、努力を続けることに人より何倍も力がいる子がいる。
同じ「1日学校に行って帰ってくる」でも、使うエネルギーの量が違う。だとしたら、家でごろごろしている時間は、サボりではなく回復の時間です。
そう思えるようになってから、長男にかける言葉が変わりました。
「なんで続かないの」は、言わなくなりました。
かわりに、帰ってきた顔を見て思うのは、これです。
今日も学校に行けたんやな。
高専2年の前期の成績は、まだ聞いていません。聞かないと決めています。手を引くのが正解かどうかも、まだわかりません。
わかっているのは、続かなかったこの子が、いま2年以上続けているという事実だけです。
📝 まとめ
- 「三日坊主」の裏に、意志ではなく特性の話が隠れていることがある
- ワーキングメモリーの弱さは、段取りの入口でつまずかせることがある
- 学校で力を使い切る子は、家では動けなくなる
- 続かなかった子でも、環境が合えば2年続くことがある
わが家の場合、見方が変わったきっかけはWISCの結果でした。数字の高さではなく、凸凹の形が教えてくれた、という感じです。
もしお子さんが「何をやっても続かない子」に見えているなら、続かないことそのものより、どこで止まっているかを見てみると、何か気づくことがあるかもしれません。
うちはまだ手探りです。それでも、あのころよりは少しだけ、この子のことがわかるようになりました。
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