発達障害の子が体調不良を言わない理由——ASD・ADHD、感覚鈍麻の仕組みと親にできること

ASD次男の記録

📌 この記事でわかること

  • ASD・ADHDで痛みや体調不良の感じ方が違う理由(感覚処理の仕組み)
  • 「痛くない」のではなく「気づかない」——感覚鈍麻と内受容感覚とは何か
  • 子どもが訴えられなくても親が気づくための具体的な工夫

※本記事にはPRが含まれます

発熱しているのに「大丈夫」と言う。

やけどしても泣かない。咳が出ているのに「どこも悪くない」と言い張る。

「我慢してるの?それとも本当に痛くないの?」

発達障害の子を育てていると、こんな場面に何度も出会います。私も長年、ずっとヒヤヒヤしながら子育てしてきました。

🔥 次男のやけど——気づいたのは、保育士さんだった

ASD次男が保育園の頃、先生から連絡が来ました。

「膝の裏に、3本の線のような跡があるのですが……」

見てみると、確かに膝の裏の柔らかい皮膚に、平行に3本の赤い跡。ガスヒーターの吹き出し口だ、とすぐわかりました。低温やけどです。

でも次男は一言も「痛い」「熱い」と言わなかった。気づいたのは、先生が偶然見つけたから。

先生の表情が少し変わりました。今思えば、虐待を疑われたのかもしれない。それくらい不自然な状況でした。

別のときは、私が飲みかけた熱いお茶を次男が飲もうとして、唇を火傷しました。すぐ病院に連れて行くくらい水ぶくれができていたのに、泣かない。痛みを訴えない。

夏には熱中症で倒れるまで気づかなかったこともありました。

中学2年の今でも、すごい咳をしていても「大丈夫」と言います。症状が出たら私が体温計を出す——そういう毎日がずっと続いています。

📋 長男の場合——頭痛・腹痛は訴えるのに、水は飲まない

一方、ADHD長男は小学校のころ、頭痛や腹痛をよく訴えていました。

「お腹が痛い」「頭が痛い」はわかる。でも喉の渇きは、自分から訴えることがほぼありませんでした。水分補給を促さないと飲まない。どのくらい渇いているのかは、親にはわかりにくかった。

同じ兄弟でも、これだけ違う。「痛みや体調の感じ方って、人によってこんなに違うんだ」と、2人を育てて実感しました。

🧠 「痛くない」のではなく「気づかない」——感覚鈍麻と内受容感覚

これは「我慢している」でも「鈍感なだけ」でもありません。

発達障害、特にASDでは、感覚の処理の仕方が定型発達と異なることがわかっています。

感覚には大きく2種類あります。

  • 外からの感覚(視覚・聴覚・触覚など)
  • 体の内側からの感覚(痛み・空腹・渇き・体温・疲れ・心拍)

この「内側からの感覚」を、専門的には内受容感覚(interoception)と呼びます。体の中からのサインを脳が受け取って処理する感覚のことです。

ASDでは、この内受容感覚の処理が定型発達と異なることが研究で示されています。「お腹が空いた」「のどが渇いた」「体が痛い」「体が熱い」——そういった体の中からのサインが、脳に届きにくい・届き方が違う状態です。

「気づかない」ではなく、「体からのシグナルの受け取り方が違う」というのが正確な理解です。

ASDの診断基準(DSM-5)にも、特性のひとつとして「感覚刺激への過剰反応または過少反応」が明記されています。音や光に強く反応する感覚過敏はよく知られていますが、その反対——刺激への反応が薄い感覚鈍麻——も、同じくらい存在する特性です。どちらが出るかは人によって違い、同じ子どもでも感覚の種類によって過敏と鈍麻が混在することもあります。

次男・ヒーターの前

⚠️ ASDの感覚鈍麻で実際に起きやすいこと

感覚鈍麻のある子に起きやすい場面をまとめます。

❌ 痛みに気づかない
転んでも泣かない。怪我していても訴えない。「どこか痛い?」と聞いてはじめて「あ、ここ」となる。親が気づかないと発見が遅れることがある。

❌ 空腹・のどの渇きに気づかない
お腹が空いても言わない。水分を自分から補給しない。熱中症・脱水のリスクが上がる。

❌ 体温変化に気づかない
暑くても「暑い」と言わない。発熱していても「しんどい」という感覚を自覚できない。

❌ 体調不良を言語化できない
「なんとなく変」という感覚はあっても、「頭が痛い」「気持ちが悪い」と言葉にできない子もいる。

次男が低温やけどに気づかなかったのは、まさに「痛みへの感覚鈍麻」だったと今は理解しています。

💡 ADHDの体調訴え——長男はなぜ頭痛・腹痛を訴えたのか

一方、ADHDの長男が頭痛・腹痛をよく訴えていたのは、ASDの感覚鈍麻とは少し違うパターンです。

ADHDの子どもは、身体的な症状(頭痛・腹痛・疲れやすさ)を訴えやすいことが知られています。背景としては、不安やストレスが身体化する場合や、感覚処理の過敏さが関係している場合があります。

ただ、長男には「喉の渇きだけ気づかない」という特徴がありました。これは注意の向き方の特性が関係しているかもしれません。ADHDでは注意が外の刺激に向きやすく、体の内側のじわじわしたサインは後回しになりやすい。「頭痛」のような強めの痛みには気づけても、「喉の渇き」のような緩やかな内側の感覚は見落とされてしまう——そういう構造が考えられます。

母・体温計を手に

✅ 親が「気づく側」になるためにしていること

子どもが自分から訴えられない、気づけないなら、親が代わりに気づく仕組みを作るしかありません。私がやっていることを書きます。

① 毎朝検温を習慣にする
次男は咳や鼻水があっても「大丈夫」と言います。症状を見たら迷わず体温計を出す。数字が正直に教えてくれます。

② 「大丈夫」を信じない。症状で判断する
「大丈夫?」の返事より、顔色・咳・鼻水・動きを親が観察して判断する。子どもの申告より、目で見える変化を基準にする。

③ 水分補給は声がけセットで
「のどが渇いたら言ってね」では機能しません。時間を決めて「飲んで」と声がけするか、飲みやすい場所に水を置く。待たない。

④ 「なんか変?」という直感を大切にする
親の「なんかいつもと違う」は、子どもの「大丈夫」より正確なことがあります。ぼんやりしている・動きが遅い・表情が違う——そういう細かいサインを見逃さない。

⑤ かかりつけ医に「訴えられない子」と伝えておく
診察室で「どこが痛い?」と聞かれても答えられない子がいます。「この子は自分から言えないので、様子で判断してください」とあらかじめ伝えておくだけで、先生の診かたが変わります。

⑥ 学校・保育園にも共有しておく
「感覚鈍麻があって痛みに気づきにくい特性があります」と担任の先生に伝えておくと、先生側も安心して対応できます。次男の保育園での火傷のように、先生が気づいたときに虐待と疑われてしまうような状況を防ぐためにも、事前の共有が大切です。「何かおかしいと思ったら教えてください」と一言添えておくだけで、先生との連携がスムーズになります。

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まとめ

⭐️ ASDは感覚鈍麻・内受容感覚の違いで、痛みや体調不良に気づきにくい
⭐️ ADHDは身体症状(頭痛・腹痛)を訴えやすい一方、のどの渇きや空腹などじわじわした内側の感覚を見落としやすいことがある
⭐️「なぜ言わないの」ではなく「言えない・気づけない仕組みがある」と理解する
⭐️ 親が「代わりに気づく側」になる仕組みを日常に作ることが一番の対策

「体調が悪いなら言ってくれればいいのに」と何度思ったかわかりません。

でも、言えない・気づけないのが特性だとわかってから、私の動き方が変わりました。子どもに気づくことを求めるより、親が気づける仕組みを作る。今日も体温計を手に取りながら、そう思っています。

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