発達障害の子が嘘をつく——「やった」「わかった」の裏にある、悪意じゃない理由

リビングで子どもと責めずに穏やかに向き合う母のイメージイラスト ADHD長男の記録

📌 この記事でわかること

  • 発達障害の子の「嘘・ごまかし」が、悪意の嘘と中身が違う理由
  • 「わかった」と言って忘れる次男、「やった」と言って終わっていない長男の実例
  • 頭ごなしに叱らない、わが家の確認のしかたと声かけ

わが子に嘘をつかれると、親は思った以上に傷つきます。

「やった」と言ったのに、やっていなかった。「わかった」と言ったのに、何も伝わっていなかった。積み重なると、この子は嘘つきになってしまうんじゃないかと、不安にもなる。私も、その不安を何度も通ってきました。

でも、ADHDの長男とASDの次男を育てるうちに、分かってきたことがあります。あの子たちの「嘘」は、大人が想像する嘘と、中身が違う。この記事では、その中身と、わが家の対応を書きます。

🔍 発達の子の”嘘”は、中身が違う

嘘という言葉には、「相手をだます意図」が含まれています。得をするため、罪を逃れるため、計画的に事実と違うことを言う。それが、大人の考える嘘です。

でも、うちの子たちの「事実と違う発言」を分解してみると、だます意図が見当たらないことがほとんどでした。記憶違い、その場しのぎ、意味の分かっていない相づち。形は嘘でも、動機が違う。ここを分けて考えられるようになってから、私は前より冷静に対応できるようになりました。

スマホを見ながら手を上げて返事をする中学生と話しかける母親のイラスト

💬 次男の「わかった」問題

次男の場合は、「わかった」です。

お願いごとをすると、「わかった」と返ってくる。いい返事です。でも、あとで確認すると、何も分かっていなかった。そして、そのまま忘れている。

最初は、いいかげんな返事をして、と腹が立ちました。でもよく観察してみると、あの「わかった」は、内容を理解した報告ではないんです。会話を終わらせるための、相づちなんですよね。話が長くなりそうだから、その場に合いそうな言葉を置く。質問の意図をうまく汲み取れないまま、それらしい返事をしてしまう面もある。

つまり、だましているのではなくて、会話の着地のさせ方が、まだ育っていない。そう捉えると、「わかった」を鵜呑みにした私のほうにも、改善の余地があったわけです。

📚 長男の「やった・出した」問題

長男の場合は、「やった」「出した」でした。

「宿題やった?」「やった」。でも見てみると、終わっていない。「プリント出した?」「出した」。でも先生からは、届いていませんと連絡が来る。

これも、意図的な嘘とは違いました。長男は記憶が曖昧になりやすく、「やったつもり」が本人の中では本当に「やった」になっていることがある。あとは、その場をしのぎたい気持ち。「やってない」と言えば小言が始まる。それが分かっているから、口が先に「やった」と言ってしまう。

だまそうという計画性はなくて、むしろその場その場の反射に近い。追及すると本人も混乱していて、どこまでが本当か、本人にも分からなくなっていることさえありました。

「やった」と答える男の子。カバンには終わっていないプリント

⚡ 頭ごなしに叱ると、逆効果だった

嘘は許さない、と正面から叱りたくなります。私も叱ってきました。でも、経験から言うと、強く責めるほど、事態は悪くなりました。

嘘を厳しく罰すると、子どもは正直になるのではなく、隠すのが上手になるんです。怒られたくないから「やった」と言ってしまう子を、もっと怒れば、もっと「やった」と言うようになる。当然の流れでした。

直したかったのは嘘なのに、育てていたのは隠す技術だった。そう気づいてから、わが家は方針を変えました。

🏠 わが家の対応——確認と、逃げ道と

やってきたことは、4つです。

叱る前に、事実を一緒に確認する。「やった?」と聞いて言葉で確認するのではなく、「じゃあ一緒に見てみよう」とノートやランドセルを一緒に見る。言葉の応酬にせず、モノで確認する。これだけで、嘘の入り込む余地がぐっと減ります。

「わかった」を鵜呑みにしない。次男の「わかった」には、「なにをするんだっけ?」と一言足す。言えなければ、責めずにもう一度伝える。返事ではなく、中身を確認する習慣です。

逃げ道のある聞き方をする。「やったの? やってないの?」と詰めると、防衛の「やった」が出やすい。「どこまで進んだ?」「残ってるのはどれ?」のように、やっていない前提を織り込んだ聞き方だと、正直な答えが返ってきやすくなりました。

正直に言えたときこそ、責めない。「やってない」と正直に言えた日に叱ってしまうと、正直は損だと学習してしまう。だから「言ってくれてありがとう。じゃあ今からやろう」で受け取る。ここがいちばん、親の踏ん張りどころだと思います。

💭 嘘の奥にある「困っている」を見る

ふたりを見てきて思うのは、嘘やごまかしの奥には、たいてい「困っている」があるということです。

怒られたくない。話についていけない。覚えていられない。うまく説明できない。その困りごとを、嘘という形で包んでいるだけ。だから、嘘だけを取り締まっても、根っこは残ります。むしろ、「この嘘は、何に困って出てきたんだろう」と考えるほうが、次の対応が見えてきました。

本音を言うと、将来の心配はあります。社会に出て、ごまかしが通じない場面で苦労しないだろうか、と。でも、家で「正直に言っても大丈夫だった」という経験を積み重ねることが、遠回りに見えて、いちばんの備えなんだと思っています。

🧠 「やった」と言ってしまう、その裏側

長男は検査を受けたときに、ひとつの力だけが弱いと分かりました。数値の話は置いておきますが、ざっくり言えば「覚えておきながら段取りを組む」のが苦手なタイプです。

そのときの報告書には、本人の言葉が残っています。テストの点は努力して上げられた。でも提出物は、「がんばらな」と取りかかろうとしたのに、まとめに何を書いていいか分からなくて出せなかった——と。

これを読んだとき、「やった」の意味が変わりました。あの子の中では、やろうとしたところまでは本当なんです。手をつけた記憶はある。だから聞かれたら「やった」と答えてしまう。嘘をついているというより、途中で止まったことが本人にも見えていない。そう考えると、問い詰めても何も出てこなかった理由が、やっと分かった気がしました。

⭐ここが大事!

発達の子の「やった」「わかった」は、だます嘘とは中身が違います。やろうとした記憶はあるのに、途中で止まったことが本人にも見えていない。責めるより、一緒にノートを開いて確かめる。正直に「やってない」と言えた日は、叱らずに認める。

🌸 その子は、「嘘つき」ではない

「やった」の裏には、やったつもりの記憶と、怒られたくない気持ちがある。「わかった」の裏には、会話をうまく着地させられない不器用さがある。

それは、嘘つきな性格ではなくて、特性と、小さな防衛です。

今日もわが子の「やった」にため息をついたお母さんへ。まずは言葉で問い詰めずに、一緒にノートを開いてみてください。そして、正直な「やってない」が出てきた日は、どうか叱らずに。その一言が言えたことが、実はいちばんの成長だったりするんです。

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