📌 この記事でわかること
- ADHDの子が「将来をイメージしにくい」医学的な理由(タイムブラインドネス)
- ASDの子が「未来を想像しにくい」特性的な理由(想像力の困難)
- 長男(ADHD)と次男(ASD)の夢の変遷と、母が感じてきたこと
- 「夢がない」ことを心配しすぎないための考え方
※本記事にはPRが含まれます
「将来の夢は何?」——この質問が、発達障害の子には思いのほか難しい問いだということを、2人を育てて実感してきました。
夢がないのか、考えられないのか、それとも別の何かがあるのか。長男と次男のエピソードをたどりながら、発達障害と「将来を想像する力」について書きます。
うちの2人の「将来の夢」の変遷
まず、そのままお伝えします。
長男(ADHD)の夢の変遷
保育園:警察官
小学3年:コンビニの店員
高専2年(現在):「コンピュータ関係で給料をたくさんもらいたい。でも努力はしたくない。できるだけ大人になりたくない」
次男(ASD)の夢の変遷
保育園:プロ野球選手(野球を見たこともなく、ルールも知らないのに)
小学3年:わからない
中学2年(現在):「明日のこともわからない。将来は遠い遠い未来」
笑えるような、でも笑えないような。そんなエピソードですよね。でもこれ、特性を知ると「なるほど」と思える部分がたくさんあります。
ADHDの子が将来を描きにくい理由——タイムブラインドネス
ADHDの研究者ラッセル・バークレー博士が提唱した「タイムブラインドネス(時間盲)」という概念があります。ADHDの子は、時間の感覚が定型発達の子と根本的に違うと言われています。
定型発達の人が「今・少し先・遠い未来」を連続して感じられるのに対して、ADHDの人は「今」しか感じられない傾向があります。未来は頭でわかっていても、感覚として存在しない。
⭐️ これが「努力したくない」の正体です。「努力すれば将来こうなれる」という因果関係を、感覚として体感できないんです。努力が報われる未来がリアル(実感)として存在しないから、行動に移せない。
「できるだけ大人になりたくない」という言葉も、変化や責任への不安が根底にあります。未来が漠然と怖い、でも具体的に何が怖いかも言えない——それがADHDの時間感覚の困難から来ていることがあります。
ちなみに長男の「コンビニ店員」は、ある意味とても現実的な答えでした。毎日目にしていて、働いている姿が具体的にイメージできる。ADHDの子は「目に見えるもの」「体験に近いもの」から夢を描きやすいという特徴があります。
「給料をたくさんもらいたいけど努力したくない」も、正直な感覚です。タイムブラインドネスがあると「今は苦しい努力→将来の報酬」という交換が感覚的に理解しにくい。将来の報酬が今の苦しさに見合うものとして感じられないため、行動できないのです。これは意志の弱さや怠けではありません。
ASDの子が将来を想像しにくい理由——想像力の困難
ASDの特性のひとつに「想像力の困難」があります。これは「創造力がない」という意味ではなく、「まだ起きていないことを具体的に思い描くのが難しい」という意味です。
次男の「明日のこともわからない」という言葉は、正直にASDの特性を表しています。未来は抽象的な概念であって、感覚として存在しない。だから「将来の夢は?」と聞かれても、答えが出てこない。
保育園のころの「プロ野球選手」は面白いエピソードです。野球を見たことも、ルールも知らないのになぜ?——おそらく周りの子が言っていた、テレビで名前を聞いた、「かっこいい職業」として概念だけ取り込んだ。具体的なイメージではなく、言葉の意味だけを借りてきたような答えです。
⭐️ ASDの子の「将来の夢」は、現実の体験と結びついていないことがあります。でもそれは嘘をついているわけでも、ふざけているわけでもない。想像力の働き方が違うだけです。
次男が「小3でわからない」と答えたことも、ある意味正直な回答です。定型発達の子なら「なんとなくこういう仕事がしたい」と言えるころに、次男は「わからない」を選んだ。想像できないことを、わからないと言える誠実さでもあります。
「夢がない」は「希望がない」ではない
2人を見ていて感じるのは、夢の描き方が違うだけで、希望がないわけではないということです。発達障害の子の「夢」は、定型発達の子と同じ形をしていなくていい。「10年後に○○になりたい」という答えがなくても、それは夢がないのではなく、未来の感じ方が違うだけです。
長男は「コンピュータ関係」という方向性は持っています。漠然としていても、ゼロではない。そこから「どんな仕事があるか」「高専でどう学べるか」を一緒に具体的に考えていけばいい。
次男は「明日のこともわからない」と言いながら、バスケは続けている。好きなことへの集中力は本物です。将来が見えなくても、「今日好きなことがある」は十分な出発点です。
発達障害の子に「10年後の夢は?」と聞くより、「卒業したら何がしたい?」「この先やってみたいことある?」と近い未来から問いかけるほうが、答えが出やすいことがあります。
将来を「遠い遠い未来」と感じている子には、遠い目標より目の前の一歩の積み重ねが届きやすいです。
また、発達障害のある大人の当事者の話や働き方を、日常の中でさりげなく見せてあげることも有効です。「こういう大人もいる」という具体的なモデルが、ぼんやりした将来に輪郭を与えてくれることがあります。
まとめ
✅ ADHDの子は「タイムブラインドネス」で未来を感覚として感じにくい——努力と結果の因果関係が体感できない
✅ ASDの子は「想像力の困難」でまだ起きていないことを具体的に描きにくい
✅ 「夢がない」≠「希望がない」——夢の描き方が違うだけ
✅ 「10年後は?」より「卒業したら?」——近い未来から問いかけるほうが届きやすい
✅ 今日好きなことがある、それが出発点で十分
長男と次男の答えを聞くたびに、「大丈夫かな」と思うことがあります。でも同時に、「この子たちの時間の感じ方は私とは違う」と知っていることで、焦らずにいられる部分もあります。完璧な夢がなくても、今日を生きていれば十分です。
発達障害の子の「将来の夢」は、ゆっくり、近くから育てるものだと思っています。「今日やりたいことがある」「明日も続けたいことがある」——その積み重ねが、いつか将来の形になる。そう信じて、2人を見守っています。
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