📌 この記事でわかること
- お手伝いの覚え方が、発達障害の兄弟でこんなに違った実例
- 「自分に関係があると動く」——次男の一番風呂から見つけた動機のヒント
- 特性に合わせた教え方と、「わかった」を鵜呑みにしない工夫
※本記事にはPRが含まれます
「お手伝いくらい、してほしいんだけどな」。
洗濯物の山を横目に素通りしていく子どもを見ながら、何度この言葉を飲み込んだか分かりません。お手伝いは、しつけの話のようでいて、発達障害の子にとっては特性の話でもある。ADHDの長男とASDの次男を育ててきて、つくづくそう思います。
同じ家で、同じように教えたのに、ふたりの覚え方はまるで違いました。この記事では、その違いと、わが家がたどり着いた教え方を書きます。
👕 すんなり覚えた長男——でも「なんで?」の関門
長男には、小学4年生くらいから教え始めました。お米を研いで炊くこと、洗濯物をたたむこと、お風呂掃除。やり方を見せて、やらせてみると、意外なほどすんなりできるようになりました。
ただし、すんなりだったのは「やり方」だけです。長男は面倒くさがりで、頼むたびに「なんで?」と返ってくる。なんで俺がやるの? 今じゃなきゃだめ? この関門を毎回くぐる必要がありました。
それでも、繰り返すうちに、時間はかかりましたが定着しました。長男の場合、できないのではなくて、腰が重い。やる気の火さえつけば、手順そのものは問題なくこなせる子でした。
🧺 なかなか動かない次男——「わかった」が当てにならない
次男は、また全然違いました。
中2になった今、自然にできるお手伝いは、お風呂掃除だけです。洗濯物がたたまれるのを待って置いてあっても、無反応。視界には入っているはずなのに、「自分がやること」として認識されていない様子です。
お米炊きは、何度教えても、毎回手順を確認してきます。「次、どうするんだっけ?」。教えた回数を思えば不思議なほどですが、興味のないことは、あの子の中に残りにくい。そして一番の曲者が、「わかった」です。お願いすると「わかった」と返事する。でも、分かっていないまま言っていることがあって、そのまま忘れる。悪気はまったくないんです。会話を終わらせる相づちとしての「わかった」なんですよね。
怠けているわけでも、反抗しているわけでもない。興味の向かないことが定着しにくいという、あの子の特性がそのまま出ているだけ。そう理解するまでは、私もずいぶんイライラしました。
💡 発見——「自分に関係がある」と、動ける
そんな次男が、お風呂掃除だけは自然にできる。なぜか。
答えは単純でした。部活のあと、自分が一番風呂に入るから。
自分が入るお風呂を、自分で洗う。掃除がきれいにできれば、気持ちよく入れるのは自分。この「自分ごと」の回路がつながっているお手伝いだけ、次男は誰に言われなくても動けるんです。
これは、わが家にとって大きな発見でした。次男を動かすのは、義務でも小言でもなくて、動機。洗濯物に無反応なのは、たたまなくても本人は困らないから。お手伝いを教える前に、「この子にとって、これはどう自分ごとになるか」を考える。その視点をもらった、一番風呂の発見でした。
📝 特性に合わせた、わが家の教え方
ふたりを見てきて固まった、教え方の型があります。
指示は具体的に。「手伝って」ではなく、「この洗濯物を、この棚にしまって」。ふわっとした頼み方は、どこから手をつけていいか分からなくなるだけでした。
一緒にやる。特に次男は、横に付いて「じゃあ一緒にやろう」の形ならできます。ひとりでやらせる前の段階を、長めに取る。
「わかった」を鵜呑みにしない。返事のあとに、「なにをするんだっけ?」と一言確認する。言わせてみて、出てこなければ、もう一度伝える。確認は疑いではなくて、すれ違い防止です。
一度で覚える前提にしない。次男の米炊きのように、毎回手順を聞かれても、「また?」と言わずに答える。手順を書いた紙を貼っておくのも手です。何度目かの「どうするんだっけ?」は、覚える気がないのではなく、覚え方がゆっくりなだけだから。
🧷 道具に手伝ってもらう、という手
心理士さんに教えてもらってから、わが家の定番になったのが「目で見える道具」でした。タイムタイマー、砂時計、壁の張り紙。もともとは学習や時間管理のために使い始めたものですが、同じ発想はお手伝いにも効きます。
口で伝えた手順は、次男の中には残りません。でも、貼ってある紙は残る。米の研ぎ方でも、洗濯物のたたみ方でも、順番を短い文で書いて、見える場所に貼っておく。そうすれば、そのつど聞かなくてよくなります。覚えさせるのではなく、思い出せる場所に置いておく。留守番のルールを決めたときにも、うちは同じことをしました。
もうひとつ、確実に効いたのが「一緒にやる」です。次男は、一人でやってと言われると動けません。でも私が横についてお願いすれば、ちゃんとできる。手が足りないから頼んでいるのに横につくなんて本末転倒のようですが、そこを割り切ってからのほうが、結局は早く身につきました。
だから「いつかは一人で」を急がないことにしています。今は一緒に、そのうち声かけだけで、いずれは何も言わなくても。段階を飛ばさないほうが、遠回りに見えて近道でした。すんなり覚えたように見える長男だって、定着するまでにはずいぶん時間がかかったんです。
🌸 完璧を求めない。できた事実を認める
そして、仕上がりに目をつぶること。これが親側の修行です。
たたみ方が多少ゆがんでいても、やり直さない。目の前でやり直すのは、「あなたのやり方ではだめ」と伝えるのと同じだから。60点でも、やってくれた事実のほうを拾って、「助かったよ」と言葉にする。
お手伝いは、家事の戦力になってもらうことがゴールじゃないんですよね。少なくともうちでは、そうでした。
📱 Neuro Dive(就労移行支援)
お手伝いの先にあるのは、いつか家を出て、働く日です。発達障害のある人が「働き続ける」ための訓練や相談ができる場所がある——それを知ったとき、私は少しほっとしました。今すぐ使うものでなくても、こういう出口があると知っておくだけで、先の心配は軽くなります。
⭐ここが大事!
お手伝いは「やる気」ではなく「手順と距離」の問題でした。口で伝えた順番は残らないので、短い文にして見える場所に貼る。一人でやってと言うより、横についてお願いする。すぐに一人でできなくても、できた事実だけは毎回きちんと認める。
🌱 お手伝いの先にあるもの
じゃあ何のためかというと、私は「役割」と「自立の種」だと思っています。
家の中に自分の役割がひとつあること。誰かの役に立てた実感があること。それは、学校の成績とは別の場所で、あの子たちの自信になります。そして、米が炊ける、洗濯物がたためる、風呂が洗えるは、いつか家を出る日の、生活の力になる。実際、寮に入った長男を支えているのは、ああいう地味な積み重ねだったはずです。
洗濯物を素通りされた日は、ため息が出ます。それでも、うちの子たちのペースで、一つずつ。お手伝いは短距離走じゃなくて、家を出る日までの長い持久走だと思って、今日も次男に「一緒にやろう」と声をかけています。
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