「うちの子、このまま中学でも大丈夫なんだろうか…」「志望校なんて決まる気がしない」
ADHDの子の中学進学を前に、そんな不安を抱えているお母さんに読んでほしい記事です。
前回の記事では、長男が小学3年生でADHD(不注意優勢型)と診断されるまでをお話ししました。今回はその後——中学でどん底に落ちながら、ひとつの夢を見つけて高専に合格するまでのリアルな体験を書いていきます。
「発達障害の子でも、自分に合った場所があれば変われる」ということを、少しでも感じてもらえたら嬉しいです。
🟠 中学入学——あっという間に「無気力」になった
小学校を卒業した長男に、中学入学への不安はもちろんありました。でも、「環境が変わればもしかして…」という淡い期待もあったんです。
その期待は、あっさり裏切られました。
中学1年の夏ごろから、長男は見る見る無気力になっていきました。
部活にも入らず、帰ってきてもぼーっとしているか、ゲームかスマホ。夜は寝ない、朝は起きられない。生活リズムが完全に崩れていきました。
授業にはついていけず、宿題は出さない。遅刻は日常茶飯事。先生から電話がかかってきても「はあ、また…」と思うだけで、何をどうすればいいのか分からなくなっていました。
声をかけると「うるさい」「わかってる」とイライラして反発するか、完全に無言。どちらかというと親への反発より、「全部どうでもいい」という感じの虚無感が漂っていて、それが私には一番つらかったです。
今思えば、私も「過介助」になっていたと思います。起きられないから起こす、忘れ物しそうだから準備を手伝う、宿題やらないから口うるさく言う——。長男にとっては「あれこれ管理されている」と感じていたでしょうし、だからこそ反発も生まれていたのかもしれません。
でも、手を引いたら今度は本当に何もできなくなってしまう。そのはざまで、私はずっと迷っていました。
この無気力な生活が、約2年続きました。成績は、見ていられないほどの状態でした。
🟠 「高専に行きたい」——突然の一言
転機は、中学2年の3月に突然やってきました。
「高専に行きたい」
ある夜、長男がぽつりと言いました。
きっかけは、1学年上の友達でした。その子が高専に進学して寮生活を始め、毎日のように「今日こんな授業だった」「寮の飯うまい」「一緒に来ないか?」とLINEしてきていたそうです。
私自身、高専のことはほとんど知りませんでした。調べてみると——
- 中学卒業後に入学できる5年一貫の専門教育機関
- 工学・情報技術を1年生から本格的に学べる
- 卒業時に「準学士」の学位が得られる
- 就職率がほぼ100%で、企業からの求人倍率が非常に高い
- 寮生活で自立を促す環境がある
長男の「唯一の得意」は数学と、パソコンを触ること。「興味を持てたら打ち込める」という特性がある長男に、高専という場所はぴったりかもしれないと直感しました。
ただし問題は、志望先の高専の偏差値が62ということ。当時の長男の実力は模試すら受けたことがなく、おそらく50以下。
「現実的に間に合うのか…?」「スイッチは入るのかな?」と、親としては不安しかありませんでした。
🟠 オープンスクールで確信した「ここだ」
9月、家族で高専のオープンスクールに参加しました。そこで見たのは、長男がようやく「自分の場所」だと思えそうな世界でした。
- 授業がとにかく面白い:プログラミングでロボットを動かす、ゲーム制作の実演、動画編集の授業など、長男の「好き」にまっすぐ刺さるものばかり。
- 個性が尊重される校風:展示物にアニメやゲームが使われていて、「オタク」でいることへのハードルが全くない雰囲気。
- 自由さと厳格さのバランス:制服なし・髪型自由だけど、SNSのルールやいじめへの対処は徹底されていると聞き安心感もあった。
帰り道、長男は珍しく興奮した様子で「ここ、絶対行きたい」と言いました。私は正直、胸がいっぱいでした。あの無気力だった子が、自分で「行きたい場所」を見つけた。
🟠 転機——中3の秋、ようやく「スイッチ」が入った
とはいえ、すぐに行動が変わるわけではありませんでした。
塾の先生には「現実的には偏差値40台の公立校のほうがいいのでは」と言われ、長男はショックを受けた様子でした。それでも私は塾の先生に「ダメでもいいから第一志望は高専にします」と伝えました。本人の意思を、まず大切にしたかったんです。
長男が本格的に勉強を始めたのは中3の秋——受験まであと5ヶ月というタイミングでした。遅い。本当に遅かった。でもそこからの集中は、小学校時代には見せなかったほどのものでした。
「興味がないことへの集中力はゼロ、でも興味があることへは過集中できる」——ADHDの特性がここで初めて「武器」になった気がしました。
🟦 発達障害の子が高専を目指すときに知っておきたいこと
経験から感じたことをまとめると、ADHDや発達障害のある子にとって高専という選択肢は、かなり「ありうる進路」だと思います。
理由は3つです:
- 「得意×専門」で伸びられる環境:興味のある分野だけを深く学ぶので、ADHDの「過集中」が武器になる
- 多様性に寛容な校風が多い:個性的な生徒が多く、「変わってる」ことがマイナスになりにくい
- 寮生活で自立が促される:親が過介助しにくい環境になることで、子ども自身の力が育つ
ただし入試は一般的な高校と同じように国語・数学・英語・理科・社会の学力が必要です。「得意科目はある、でも苦手科目が足を引っ張る」というのがADHDの子の典型的な悩みどころ。
長男の場合、数学は得意でしたが、国語・英語が弱点でした。そこを入試直前の5ヶ月で集中的に補いました。
🟩 受験勉強で役立ったこと——タブレット学習との組み合わせ
「5ヶ月で偏差値を10以上上げる」という状況で、通常の紙教材だけでは長男のペースに合いませんでした。
ADHDの子は、「今すぐ正解か不正解か分かる」「短いサイクルで達成感がある」という形式が勉強のエンジンをかけやすいです。紙のドリルをじっと解き続けるより、タブレットのインタラクティブな学習のほうが集中が続いていました。
小学校の頃から使っていたスマイルゼミは、その点で長男に合っていました。「タブレット1台で完結する」「解いたらすぐ採点される」「習熟度に応じて問題が出てくる」という仕組みが、注意の散りやすい子の勉強スタイルにフィットしていたと思います。
受験直前は塾と併用しながら、弱点の英語・国語を中心に詰めました。
🟠 合格発表——「満面の笑顔」を見た日
合格発表の日、長男は「自分で見る」とパソコンを開きました。
数秒後——その顔が、満面の笑顔になりました。
私は信じられない気持ちで固まってしまいました。「嬉しい」という感情が追いついてきたのは、その少し後のことです。あの無気力だった子が、自分で決めた場所に、自分で届いた。それがどれほどのことか、言葉にできませんでした。
📝 まとめ:「どうせ無理」と思わないでほしい
長男の中学時代を振り返ると、正直「もうダメかもしれない」と思った瞬間が何度もありました。でも今、高専2年生として充実した生活を送っている姿を見て思うことがあります。
子どもには、「自分の場所」に出会うまで待つ時間が必要なこともある。
- 無気力に見えても、どこかでアンテナを張っている
- 「行きたい」という気持ちが生まれたとき、子どもは変われる
- 親は「正しい選択」より「本人の意思を尊重する」ことが大事
もし今、中学生のお子さんを見て「このまま大丈夫かな」と不安なお母さんがいたら——その気持ち、とてもよく分かります。でも、今すぐ変わらなくても、その子なりの「スイッチ」は必ずあると思います。
次の記事では、高専入学後の長男が寮生活でどんな変化を見せたか、母として感じたことをお話しします。
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