前編:入学前の不安と、思わぬ安心感
はじめに
長男が中学3年の春、「高専に行きたい」と突然言い出しました。
今まで親の声に全く耳を貸さず、昼夜逆転・勉強拒否・生活崩壊だった子が、自ら進路を選び、目を輝かせていたのです。
その姿を見て、私は「この子には“打ち込める何か”が必要だったんだ」と感じました。
しかし、長男はADHD(不注意優勢型)の診断を受けています。生活面でも学習面でも不安だらけ。高専という、一般的に“厳しい”と言われる学校に本当に通えるのか…不安と期待が入り混じる中、私たちの高専生活は始まりました。
1. 入学説明会で見つけた「支援相談会」の案内
高専の入学説明会で、最も印象に残ったのは資料の一文でした。
「特性が強く、生活や学習に支援が必要な方は、説明会終了後に個別相談会を行います。」
こう明記されていたのです。
高校では見かけない配慮に驚き、私は「まず相談してみよう」と即決しました。
2. 高専は“高校”ではなく“学生扱い”の場所
高専は高校とは異なり、「大学のような学び」が始まる場所です。
- 授業は90分単位
- 担任の先生も“研究室”を持つ大学教員
- 赤点(60点未満)で単位が取れず、進級できないことも
- 5年制で卒業時は「準学士」相当
- 進学は大学3年次への編入が可能
学びに対する姿勢が自立していることが前提のような環境ですが、その分「成績さえ取れていれば自由にしてOK」という空気も感じられました。
長男のように、特性が強くても「勉強を頑張る子」にはチャンスが広がる場所なのかもしれない——そう思えた瞬間でした。
3. 「オタクが多い」「個性が強い」学生たち
オープンキャンパスで案内してくれた在学生が、こんなことを話してくれました。
「オタクが多くて、ちょっと変わった人も多いですよ(笑)」
この一言に私はとても安心しました。
長男は人付き合いが得意ではなく、好きなことに没頭するタイプ。
だからこそ「変わっていても居場所がある」環境は、親として何より嬉しかったのです。
4. 個別相談会で支援体制を確認
説明会後、私と長男は個別相談会へ。そこには多くの保護者が並び、それぞれの不安を抱えて相談している様子がありました。
私たちの担当になった先生に、長男の特性(ADHD不注意優勢)と以下の不安を伝えました。
- 授業90分に集中できるか
- 提出物の管理ができるか
- 寮生活に馴染めるか
先生はこう返してくださいました。
「特性についての配慮はできる限り行います。ただ、成績が取れているかが一番の指標になります。赤点が続いた場合は進級が難しくなりますが、逆に成績さえクリアしていれば“個性”として受け入れられる学校です」
また、担任の先生にも情報を伝えておいてくださるとのことでした。
5. 学内のカウンセリング体制
驚いたのは、校内に常駐の心理士(カウンセラー)がいること。学生が予約を入れれば、定期的に相談が可能とのことでした。
中学時代、長男は通級指導教室で先生と信頼関係を築いた経験がありました。私はすぐに入学後の定期カウンセリングを依頼しました。
6. 入学後、担任との面談で言われたこと
入学式の日、担任の先生とも面談しました。先生はこう話してくださいました。
「ここは、個性的な学生も多くて、それぞれが自分のペースでやっています。成績さえ保てれば楽しく過ごせると思いますよ。ただ、赤点が多くなると精神的にもつらくなるので、その前に“転校”を考えてあげた方がいい場合もあります。」
一瞬ギョッとしましたが、「成績と本人の様子」を見て、必要なら柔軟に進路を変えていく選択肢を持っておく——というアドバイスと受け止めました。
私はこの時から、高専のことをもっと知り、万一に備えて近隣高校の情報収集を始めました。
続きます・・・
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